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クラシック音楽 名盤・名録音探しの旅

ノリントン「魔笛」

モーツアルト/「魔笛」 ノリントン/ロンドンクラシカルプレーヤー



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 音楽とは関係のない話題を一つ。6月12日の朝日新聞の一面に「団塊獲得へ大学動く」
、38面の第2社会面に「研究者昇任ガラス張りに」という記事が掲載されていました。(私のところは神奈川14版です。)ご存じのとおり少子化で07年には全入時代が到来することになっているので国立・私立を問わず大学は学生の獲得に必死なっています。あの誇り高き東大でさえオープンキャンパス、入試の説明会を行うという時代。その一方で新設大学が増えるという珍現象が生じています。「団塊獲得へ大学動く」ですが肝心の団塊の人たち、大学に入るゆとりがあるんでしょうか。一般的に60で退職しても年金が暫くもらえない状況があるし、支給される年金で果たして何処まで生活出来るか、そんな不安な状況が現実にはあります。後者の話題はいかに大学の教員人事が実力以外の要因で行われていたかということを示しているし、果たしてこの制度で実力で昇任する制度が動くかやや眉唾。その心に若手研究者の救済措置も見え隠れしているようですし。そもそも多くの大学で教員の定年年齢を延ばしたがために昇任年齢が必然的に上がってしまったという、定年延長をする前から解っていたことへの対応をやっとしようとしたにすぎない、という皮肉な見方も出来るんではないでしょうか。二つの話題共に最高学府を標榜する大学としてはどちらも将来の見通しか悪いが故に話題提供に至ったとみることも出来るのではないでしょうか。
さて、本来の音楽の話題、ノリントンの「魔笛」、これはおもしろい。おもしろいといってはやや失礼か。とにかく新鮮の一語に尽きる。演奏スタイルは、録音当時(1990年)の流行である古楽器奏法。弦楽器はノンビブラートで弾かれ、オーケストラの編成は少し小さめ、そしてピッチが少し低く設定されていることなどの特徴があるが、歌手は古楽器奏法と現代奏法の中間くらいで適度にビブラートをつけて歌っている。何よりも演奏で特徴的なことはテンポが全体をとおして快速調であること。これがまた非常にはまっている。それと歌手が大きな劇場で歌うときのような大きな声を出していないこと、無理な発生をしてないのでその分表現に神経が行き届いている。古楽器の演奏だからひなびているなどと思ったら大間違い。至る所に工夫が凝らされていて相当「魔笛」を聞き込んだ方でも飽きさせられることはまずあるまい。「魔笛」にはオブリガードにチェンバロが使われることはないのであるが、もちろん使用されているとは記載がないがおそらく弦楽器でそれに近い音を作っているのではないだろうか、これも大変ユニーク。例えば暗示的に使われているトランペットによる3和音でさえそれぞれ工夫がなされている。
 私は「魔笛」を3つ選べてといわれれば、ショルティー/ウィンフィルの旧録音盤、ベーム/ベルリンフィル盤、そしてこのノリトン盤をあげたい。それぞれ歌手のことを言い出すときりがないが、どれも多少の瑕疵はあってもトータルでいえばどれも個性的で素晴らしい演奏である。我が国では、ショルティーは「強引」の代名詞のような指揮者としてみられがちだがそれは大きな誤解。ショルティーはオペラや協奏曲の伴奏をさせたらそれは練達の指揮者なのである。ベーム、70年代に日本で爆発的な人気を博したが亡くなると急速に忘れられた指揮者の一人となってしまった。確かに性格的にはかなりいやな爺さんだったようだ。それと政治的にも戦前はナチスに協力的であったのに戦後は一貫して否定した過去もあるが、60年代(すでに50年近く前になってしまったが)に録音した一連のモーツアルトはどれも捨てがたいものがある。「手堅いだけ」といって嫌う人もいるが忘れられていい指揮者ではないと思う。そして新たに加えたいのがこのノリトン盤。ともかくあっという間に70分近い1幕を聞き終えてしまった。ともかく新鮮でそして人物の表現も大変個性でありかつ彫りも深い。もっともっと聞かれて良い演奏の一つである。バージンレーベルから最近格安で手に入るようになったので是非一聴されることをお薦めしたい。
by classical-clatter | 2006-06-13 21:36
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クラッシック音楽やその他道楽の体験帳

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